円錐角膜治療(角膜クロスリンキング)

円錐角膜とは

円錐角膜は角膜の中央付近の厚みが薄くなり、角膜が円錐状に前方が突出する進行性の疾患です。思春期から成人早期にかけて発症し、40代までに徐々に進行することが多いです。進行により近視や不正乱視を来たし、視力が低下します。両眼性が多いですが、発症と進行時期が異なる場合もあり、診断時に片眼のみの場合があります。原因は今のところ不明です。

円錐角膜とは

円錐角膜の治療について

不正乱視のために眼鏡やソフトコンタクトレンズを装用しても良好な視力が得られなくなった場合には、ハードコンタクトレンズが必要になります。ハードコンタクトレンズは、不正な角膜の表面を滑らかなレンズで覆ってしまうために、眼鏡やソフトコンタクトレンズで矯正できない人でも、良好な視力を得ることができます。円錐角膜専用(円錐角膜の特殊なレンズへ飛ぶようにする)の特殊レンズが開発されているため、かなり進んだ人でも処方が可能になってきました。10数年前までは眼鏡、コンタクトレンズ、角膜移植のみでしたが、近年角膜クロスリンキング(飛ぶ)、角膜内リングなどの新しい治療法も開発され、病期に応じて治療法を選択することで、患者さまの視力の維持および向上が実現可能になってきました。

症状

初期症状は、いつもよりまぶしく感じる、二重に見える、光に過敏になるなどがあります。さらに進行すると角膜の突出が強くなり、濁りが生じて視力低下やゆがみなどの症状が起こります。


進行により急性水腫が生じ、急激に視力が低下するケースがあります。急性水腫は数週間から数ヵ月間で改善することが多いですが、強い角膜混濁が残り、視力障害を来す場合には角膜移植(角膜移植の画像へ飛ぶ)の適応となります。

原因

円錐角膜の病態は未だに完全に解明されていませんが、角膜実質コラーゲンの架橋構造の異常や細胞外マトリックスの分解酵素活性の亢進が関与していると考えられます。また、目に対する擦過や打撲などの機械的刺激も発症及び進行の一因となる可能性が示されています。

角膜クロスリンキングについて

2003年より円錐角膜に対する新しい治療法として角膜クロスリンキング治療が登場しました。角膜クロスリンキングはリボフラビン(ビタミンB2)の点眼を行いながら長波紫外線(UVA)を照射することで、角膜実質のコラーゲン線維の架橋構造(クロスリンク)を増やし、強度を上げ、円錐角膜の進行を停止させる新しいコンセプトの治療です。


角膜クロスリンキングは現在までに世界中で20万眼以上行われており、有効性と安全性が確立されています。角膜クロスリンキングが広く普及してきたヨーロッパでは、角膜移植適応眼における円錐角膜眼の割合が半減したとも言われています。

治療方法

治療方法

手術は角膜上皮を剥いで行う方法と剥がないで行う方法があります。角膜上皮を剥ぐ方法の場合、リボフラビンを角膜実質のより深い層まで浸透させることで、より多くの角膜体積を架橋することができるという長所がありますが、角膜上皮が回復するまでの術後の疼痛、視力不良、易感染性があることや、一時的に角膜混濁が出現する可能性があるといった短所があります。一方、角膜上皮を剥がない方法の場合、強化リボフラビンという薬剤の浸透性を上げる添加物を含む特殊なリボフラビン点眼液を用いて行います。この方法では架橋できる角膜体積はやや少ないため、疾患の進行を抑えられる効果がやや弱くなりますが、角膜上皮を剥ぐことに伴う合併症が起きないため、視力が良好な初期症例にも適します。また、角膜上皮の厚さを含む分、適応は角膜上皮をはぐ方法より広がり、かなり進行した症例でも治療が行えます。角膜上皮を剥ぐか剥がないかは、術前検査の結果および患者様のご希望を踏まえた上で、適切な術式を決定します。


紫外線照射時において安全に手術を行うために、角膜上皮を剥ぐ方法では、角膜の厚さが400μm以上必要とされています。もし400μm未満である場合は、手術中に低張性点眼液で角膜を厚くしますが、それでも400μm以上に達しなければ、手術が中止となります。角膜上皮を剥がない方法では、380μm以上の角膜厚が必要とされており、もし380μm未満である場合は、同じく手術中に低張性点眼液で角膜を厚くしますが、それでも380μm以上に達しなければ、手術が中止となります。

角膜クロスリンキングの適応

この治療法が適する人

  • 年齢14歳以上の方
  • 進行性の円錐角膜、または進行性の角膜変形疾患と診断されている方
  • 角膜の最薄部の厚さが400μm以上ある方

この治療法が適さない人

  • 眼の病気(活動性の感染症・角膜ヘルペスの既往・緑内障・網膜変性疾患等)がある方
  • 膠原病などの角膜創傷治癒に影響を与える全身疾患がある方
  • 妊娠・授乳中の方
  • その他、担当医が不適応と診断した場合

危険性と起こりうる合併症

一般的な合併症として予想されるものは、術後早期のものとして、角膜上皮の細胞が回復するまでの数日間は、目の痛み、充血、視力低下が起こりますが、一過性のものです。
角膜に混濁が出ることもありますが、ステロイドの点眼を用いて対処します。その他、術中術後の感染性・非感染性炎症が2~7%にみられると報告されています。これら以外の合併症が生じた場合、その時点で処置を行います。その際の医療は通常の保険診療となります。
疾患が進行してハードコンタクトレンズでの矯正が難しくなった場合は、角膜移植手術を行うことがあります。さらに、放置しておくと、角膜の薄くなった部分が破れ、最悪の場合は失明に至るおそれがありますので、適切な治療を行うことが重要です。

他の選択肢とその有効性・危険性

円錐角膜の進行を止める他の治療方法は現時点ではありません。ハードコンタクトレンズは視力の矯正に有用ですが、疾患の進行を止める効果はありません。

費用

片眼 132,000円(税込)

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